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カテゴリ: Column

Rick Beatoの人気YoutubeチャンネルでのPat Methenyのロングインタビューが公開されました。





一問一答の機械的なインタビューでなく、対話をしながら内容を深めていくスタイルになっています。Rick Beatoは昔からのPat Methenyのファンのようで、初期の活動内容や関連するミュージシャンについても詳しく、またギタリストとしてYoutubeチャンネルで様々な曲の音楽的な分析・解説なども行っていることもあり、音楽的な問いかけも多く、とても幅広い話題に関する深いインタビューとなっています。


インタビューは、ギターのストロークをジャズに組み入れた話などから始まって、Gary BurtonJacoLyle Maysなどのキーパーソンとの関わり、Bright Size Lifeや Watercolorsなどのアルバム制作について、バンド・リーダーの役割について、変則チューニングやレキシコンなどによる音作りについて、良いメロディの探求について、Jamesのブリッジの難しさについて、PMGを立ち上げた頃のエピソード、なぜギグが大切なのか などなど。
話題はあちこちに飛ぶ感じでしたが、それぞれその場でPat Methenyが思いつくままに自然に語っていったものが、編集は最小限にしてそのまま動画となっているようでした。結果としてPat Methenyの人生そのものを振り返るような形にもなっているように思いました。


個人的に印象に残ったのは、PMGが立ち上がった頃のエピソードでした。(1:07:00あたり)

「Gary Burtonバンドの活動で5,000ドルくらい貯金ができたので、そのうちの3,000ドルでバンを買って、1,500ドルでオーバーハイムから出たばかりの4-Voiceシンセを買って。バンをLyleと僕で運転しながらアメリカ中の各都市を回っていった。300,000マイルくらい走ったかな。お客さんが6人しかいなくても、次回いくと200名になって… ということを繰り返していった。今も一緒だけど」

Lyle Maysについては、出会った頃の話もしていました。(25:40あたり)
「Lyleはギターもうまいし、僕もピアノで作曲をするし、何もかも感覚が合うんだ」(インタビューではもっとたくさん語っています)
Lyleの話をする時はいつも神妙な、それでいて優しい、柔らかい表情になるのも印象的でした。


デビューの頃にリリースした「Bright Size Life」が全然売れなかったらしいのですが、「それでも2枚目の『Watercolors』をつくるチャンスがもらえてラッキーだった」というような話もありました。ちょうどその時期にLyle Maysに出会ったわけですが、2枚目をつくるチャンスが無かったらどうなっていたんだろう、とか、WatercolorsでLyle Maysと一緒にアルバムをつくれていなかったらどうなっていたんだろう、なんていろいろと考えてしまいました。


「Bright Size Life」については、「当時は誰にも気づいてもらえなかった」「20年くらい経ってやっと周りにも理解されるようになってきた」ということをしみじみと話していました。その話に続けて、若い世代に向けて、


「あなたが良いと思うことは、あなたしか知らない。誰かの感じる良いことというのは気にしなくて良い。皆がやっているようなことを追いかけるようではいけないんだ」


というようなことを静かに話していて、とても心が震えました。(1:17:30あたり)

一方音楽的な面については、インタビューの前半で「Jamesのブリッジはシンプルだけどソロを取るのが難しい」という話題が出るのですが、その流れからかインタビューの終盤で、Pat Methenyがギターで実際にJamesのブリッジについての解説もしています。(1:26:30あたりから)

ちなみにこの最後に弾いているギターが、Ibanez製のようなのですが、ピックアップがCharlie Christianっぽいもので、ボディーがつや消しのブラック? 紺色? で、これまで見たことのないギターでした。今後はこれがメインギターになるんでしょうかね?


様々な角度からあらためてPat Methenyの魅力について伝えてくれる、とても素晴らしいインタビューでした!


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Pat Methenyのニューアルバム「From This Place」の各曲は、Apple MusicやSpotifyといった各音楽サービスで聴けるようになっていますね。Youtubeでも聴くことができるので、「再生回数」や「いいねボタン」が押された数で「どの曲の人気が高いのか」がわかるのかな、と思い調べてみました。

2020/3/8夕方時点のデータは、次のとおりでした。

Title                     Views  Good  Bad  G/Views B/Views 
1.America Undefined     574,446 7,634  233  1.33%   0.04%
2.Wide and Far          104,678 2,752   63  2.63%   0.06%
3.You Are               283,284 5,290  114  1.87%   0.04%
4.Same River             80,974 2,192   28  2.71%   0.03%
5.Pathmaker              17,404   237    6  1.36%   0.03%
6.The Past in Us         18,147   252    6  1.39%   0.03%
7.Everything Explained   18,636   262    6  1.41%   0.03%
8.From This Place        31,056   350   33  1.13%   0.11%
9.Sixty-Six              25,340   474    7  1.87%   0.03%
10.Love May Take Awhile  13,903   225    5  1.62%   0.04%

 
この中で1〜4曲目はアルバム発売前に曲が公開されていましたので、再生回数(Views)は多くなっています。曲が公開された時期が異なるため、回数にはバラつきがでています。公開順は1→3→2→4だったでしょうか。公開タイミングは2週おきくらいでしたので、再生回数は公開期間にほぼ比例しているようですね。

1〜4曲目の中では、「4.Same River」と「2.Wide and Far」の「Good/Views」の値が高いです。10曲全体の中でもとても高いのですが、これはどうしてでしょうね…
私の想像としては、「4.Same River」は発売前に公開された際に、ギターシンセのサウンドなどがファンにとって期待通りのサウンドだったので「Good」が押されたのかな、といったところですが、どうでしょうかね… 「2.Wide and Far」は「Good/Views」の値も高いのですが「Bad/Views」の値も高いんですよね。ここがちょっと謎です。

一方、5〜10は同時に公開されましたので再生回数に関する条件は同じはずなのですが、「8.From This Place」と「9.Sixty-Six」 の再生回数が特に多いようです。「8.From This Place」は再生回数は多いのですが、「Good」が少なく「Bad」が多いのが特徴ですね。これは曲の成り立ちが政治的なところがあるようですので、理由は何となくわかるような気がします。「9.Sixty-Six」は少し地味な曲のようにも思えますので少し意外でしたが、これだけ違いが出るということは、多くの人を惹きつける特別な何かがあるのだと思います。Last Train Homeのような雰囲気があるところとかかな…

皆さんの一番のお気に入り曲はどちらでしょうか?
 
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  • ニューアルバム「From This Place」リリース!
Pat Methenyの6年ぶりのニューアルバム「From This Place」に関する情報が発表されました。2020/2/21にリリースされるそうです。

1曲目の「America Undefined」の音源が2019/11/14に公開されましたが、そのスリリングでドラマチックな内容に、アルバム全体はこの先どのように展開していくのかとても楽しみになります。早くアルバム全体を聴いてみたいものです。





  • Miles Davis Quintetの活動がヒント?
このアルバムは、カルテットの演奏をベースに、オーケストラの演奏なども加わったとても壮大な作品となっています。

Patのコメントによれば、このアルバムの制作にあたっては、1960年代後半のMiles Davis Quintetの活動がヒントとなっているそうです。

2015年〜2016年頃、Pat MethenyはRon Carterとデュオでの活動をしていましたが、その際にPat MethenyはRon Carterから、Miles Davisが1960年代後半に、ライブではスタンダード曲のようなバンドメンバーの皆に馴染みのある曲を繰り返し演奏して、バンドメンバー間の共通言語をつくるようなことをしていた、という話を聞いたそうです。Milesにとって、そうした土台づくりが新しい作品をつくる際にとても有効だったようです。

その話を聞いて、当時何か新しい取り組みをしたいと考えていたPat Methenyに、何かが閃いたようです。そして新しいQuartetバンドでそのアプローチを取り入れたようです。
Quartetのライブツアーで過去の自作曲を繰り返し演奏をして、バンドとしての共通言語をつくっていきました。そして新曲のレコーディング時には、お互いをよく理解しあっているそのバンドで、リハーサルなしで演奏をして何が起きるかを試したようです。

そのレコーディングがあったのは、おそらく2016/12/14頃だと思います。。
2016/12/15に私がまとめた記事はこちらです。メンバーのTwitterやInstagramの投稿をまとめています。
バンドメンバーが興奮しながらレコーディングに臨んでいる様子が伺えます。

2016/12/15 アバタースタジオでレコーディング開始!
http://patweek.com/archives/68016759.html

これを見ると、メンバーの皆さんはめちゃめちゃ興奮してますね。

これはあくまでも私の想像ですが、メンバーのこの興奮ぶりをみると、メンバーはおそらくこのレコーディングした内容で、すぐにアルバムがリリースされると思っていたんではないでしょうか。これも想像ですけど、おそらくメンバーにとっては完成度も納得のいくものだったんではないでしょうか。

しかしPat Methenyには、何かが足りなかったようです。

  • オーケストラパートの追加
Patのコメントによれば、カルテットのレコーディングの初日を終えた段階で、この素材に加えてオーケストレーションや広がり、新たな色合いが欲しくなったようです。そこから、新たに足りない部分についての制作に取り掛かったようです。

追加した要素の一つがオーケストレーションだったということだと思いますが、そのレコーディングが行われたのは、カルテットのレコーディングの約一年後! おそらく2017/12/3頃だと思われます。これまた時間をかけてますねぇ!

その頃にまとめた記事はこちらになります。

Pat Methenyのオーケストラ・レコーディングが完了したようです
http://patweek.com/archives/74106325.html

このレコーディングは他の作品向けの演奏だった可能性もありますが、「From This Place」にクレジットされているJoel McNeelyさんの投稿なので、たぶん「From This Place」向けだったということで合っていると思います。ここでオーケストラパートを加えたのだと思います。

さて、これでもまだ2017/12ですね。この時点でもまだ満足のいく内容に届いていなかったんでしょうか。このレコーディングからリリースのアナウンスまでまだ2年近くありますので、まだまださらなる新たな色合いを求めて手を加えていったのかもしれません。
アルバムにはMeshell Ndegeocello, Gregoire Maret, Luis Conteもクレジットされていますので、その後また手を加えたという可能性は高いと思います。何かわかったらまたこちらに書いていこうと思います。

  • 2015年頃から2019年までの活動履歴を眺めてみると
このように、今回の「From This Place」は、とても長い年月をかけて、制作途中にも様々なアイデアを重ねて組み入れて創られてきたようです。

「From This Place」を企画していたと思われる2015年頃から、この2019/11のアルバムリリース発表の時期まで活動の様子をまとめてみましたので、その表をあげておきます。

Pat Methenyはこの長い期間、日々の様々なギグをしながらも、組み入れるアイデアをいろいろと考えていたのではないでしょうか。

この活動の履歴を眺めていると、新カルテットが結成されてから今回の「From This Place」リリースまで、Pat Methenyがどのようなことを考えながら活動を進めてきたのか、なんとなく見えてくるような気がしてきます。自分が観てきたいくつかのライブも、もしかするとそのアイデアなどが生まれる過程の一部だったのかも、と思うととても感慨深いものがあります。

素晴らしいアーティストと同じ時代にいて、素晴らしい作品が創られていく過程を同時に体験できるというのは、なんと幸せなことでしょう!


DateMembers, etc.Place
2015/9Pat Metheny & Ron CarterUS
:::
2016/4Pat Metheny & Ron CarterUS
2016/5Start a New Quartet (Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio Sanchez)Japan, Korea
2016/6Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezChina -> Europe
2016/7Pat Metheny & Ron CarterEurope
2016/8
2016/9Pat Metheny & Christian McBride
Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio Sanchez
Japan -> US
2016/10
2016/11
2016/12Recording!
Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio Sanchez
US
2017/1Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezUS
2017/2Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezUS
2017/3
2017/4(Wichita Jazz Festival etc.)US
2017/5Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezEurope
2017/6Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezUS
2017/7(Jazz Festival etc.)
2017/8Pat Metheny with James Francies, Vicente Archer & Bill StewartUS
2017/9
2017/10Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezEurope
2017/11Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezEurope
2017/12Recording!
with Orchestra (Joel McNeely)
US
2018/1
2018/2Pat Metheny with James Francies & Anwar MarshallUS
2018/3Pat Metheny & Steve SwallowUS
2018/4
2018/5
2018/6Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezEurope
2018/7Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezEurope
2018/8Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezUS
2018/9Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio SanchezUS
2018/10Pat Metheny with Gwilym Simcock, Linda May Han Oh & Antonio Sanchez (Scott Amendola)US
2018/11
2018/12
2019/1Pat Metheny with Gwilym Simcock & Linda May Han Oh
Pat Metheny Side Eye with James Francies & Nate Smith
Japan
2019/2
2019/3Pat Metheny with Tbilisi Symphony Orchestra
Pat Metheny Trio with Darek Oleszkiewicz & Jonathan Barber
Pat Metheny Side Eye with James Francies & Nate Smith
Georgia, Poland

US
2019/4
2019/5Pat Metheny SoloUS
2019/6
2019/7
2019/8Pat Metheny Side Eye with James Francies & Marcus GilmoreUS
2019/9Pat Metheny Side Eye with James Francies & Marcus GilmoreUS
2019/10
2019/11Pat Metheny Trio with Darek Oleszkiewicz & Jonathan Barber
+ with Orchestra
Italy
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「Beyond The Missouri Sky」がアナログ盤としてリイシューされて発売中です。
このアルバムの暖かなサウンドは、アナログととても相性が良いような気がします。

けっこういいお値段ではありますが、いつでも手に入るというものではないかもしれませんので、興味のある方はこの機会にぜひ。

2018/11/10現在で、各店舗では次のような価格となっています。
Amazon 4,780円(マーケットプレイスで海外から取り寄せだと3,136円+送料340円等)
HMV 4,800円(会員価格)
Tower Records 4,947円
Disk Union 3,780円

私は日本のAmazonのマーケットプレイスでアメリカから3,500円くらいで入手しましたが、商品はチェコ製の重量盤でした。アナログ盤の製造はチェコが世界一だったと思いますのでチェコ製というのは納得ですが、他の価格帯で日本国内で流通している商品の製造国や盤の種類は不明です。もし何か情報がありましたら、ぜひ教えてください。
 
Beyond The Missouri Sky [12 inch Analog]
Charlie Haden/Pat Metheny
Verve
2018-08-31








このアルバムのリリースは1997年でしたが、そういえば当時ジャズライフに記事を書かせていただいたことを思いだしました。懐かしいです。

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こちらはbeyond the MIssouri Skyのノートです。
ノートの高さがCDサイズです。

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表紙を一枚めくると…


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なんと二重構造!
凝ってますね〜。


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ジャズ関連情報といえばやっぱりジャズライフ! そろそろ12月号が出る時期ですね!



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【2017/11/15追記】
本件、インタビュー中の12月というのはもしかすると2016/12のことかもしれないです。(確かに2016/12にレコーディングをしていたというニュースは入っていましたね…)

ということで、もうすでに下記のようなレコーディングは終わっている、ということでも話は合うので、そういうことかもしれません。
ただ、そうすると2017年に入っても同じセットリストで演奏をし続けている理由がよくわからなくなっちゃうんですが、ニューアルバムが出るまでは前の流れで繋いでいる、ということなんでしょうかね…


———
(2017/10/25の記事)
Pat Methenyのこの一年半のライブ活動について、ずっと疑問に思っていました。

せっかくの新しいメンバーなのに、新曲をやるわけでもなく、昔の曲をほとんど同じセットリストで繰り返し演奏していて… 「いったい何をやっているのだろう?」と。そう思いませんでしたか?

でもこのインタビューでその狙いがわかりました!

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