今回(2016年5月)の来日公演では、一曲目のPikassoギターからSo May It Secretly Beginへと続くところについて、「ベースとギターの音程に違和感があった」というコメントをいただいていましたので、少し注意深く聴いていました。
私が聴いた感じでは、「So May It〜」のイントロのベースラインは、テーマに入る直前に全音下がって、曲全体が二度下に転調していたようでした。私は相対音感しかないので音程はわからなかったのですが、「『So May It〜』はCmなので、おそらくDm→Cmと下がったのだろうな…」と思っていました。ホールではベース音が響いてクリアに聴こえないこともあると思いますので、コメントで上がっていた違和感というのはこのあたりのことではないでしょうか。(後で絶対音感のある方に確認したところ、「Dm→Cmと下がった」とのことでした)
「So May It〜」のイントロのベースが原曲の一音上からスタートしたのは、おそらくPikassoでラストに鳴らすコードとずれないようにする必要があったからではないかと思います。ということは、今回のPikassoのチューニングはDm系だったのだろうと思います。(これも絶対音感のある方に後で確認したところ、今回はDmだったそうです)
これまでの作品やライブをあらためて振り返ってみると、この「(Pikassoギター)→「So May It〜」のような曲に続く、というパターンがけっこうあることに気づきましたので、ちょっとまとめておこうと思います。
ひとまず、今回のライブのパターンを、
a.<(Pikassoギター)→「So May It Secretly Begin」(Dm → Cm 型)(2016年)>
と呼ぶことにして、続けてみます。
b.<「(Pikassoギター)→「A Story Within The Story」(Cm → Cm 型)(1997年頃)>
Pikassoギターが初めて大きくフィーチャリングされたアルバム「Imaginary Day(1997年発売)」では、「Into The Dream(Pikassoギター)」→「A Story Within The Story(ベースラインが「So May It〜」と似ている)」の流れが、今回の公演のオープニングの二曲の構成ととてもよく似ています。曲はそれぞれ独立していますが、アルバム上では続けて演奏されるようになっています。「Into〜」と「A Story〜」二曲のキーはどちらもCmです。
確か「A Story Within The Story」は「So May It〜」の続編のような位置づけで作られた曲だったと記憶しています。
c.<(Pikassoギター)→「So May It Secretly Begin」(Cm → Cm 型)(2008年頃)>
Pikassoギターから「So May It〜」に繋がる演奏は、2008年頃のChristian McBride(b)との演奏などでも観られますが、そこでは「So May It〜」には転調せずに入っています。この頃のPikassoギターのチューニングはCmだったようで、そのまま自然な形で続けて演奏されています。
【Christian McBride(b)との演奏】
d.<★(Pikassoギター)→「When We Were Free」(Cm → Em 型)(2008年頃)>
アルバム「Day Trip」では、Pikassoギターから続けて「When We Were Free」のベースラインへと続くパターンが収録されています。よくよく聴いてみると、この「When We〜」のベースラインも「So May It〜」とちょっと似ています。Pikassoギターのキーは「Cm」で、「When We〜」のキーはなんと「Em」。そのため、今回のライブのイントロのように、ベースラインをCmで始めて、テーマに入るところでゴリッと長三度上に転調しています。
【Day Tripでの演奏】(最初のPikassoギターの演奏がなぜかカットされてしまっていますが、ベースのCm→Emの流れは残っています)
e.<★(Pikassoギター)→「Come And See」(Dbm → Dbm 型)(2012年頃)>
アルバム「Unity Band」に入っている「Come And See」も、ベースラインが「So May It〜」に似ています。この曲もアルバムではわざわざPikassoギターに続けて演奏されているというのが興味深いですね。このPikassoギターの音からこういったベースラインが始まるような流れが、Patは好きなんでしょうか。
ちなみに、ここでPikassoギターのチューニングは半音上がってDbmとなっています。これは… なぜでしょうか? 「Come And See」のキーもDbm。このベースラインと同じラインを吹いているバスクラリネットとの関係なんでしょうか… あまり合うキーでもないような気もしますが…
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以上、「(Pikassoギター)から「So May It Secretly Begin」のようなベースラインが続けて演奏されるパターン」をまとめてみました。
あとは1998年の「Imaginary Day」公演のオープニングで、同じようにPikassoギターから「Have You Heard」に続く展開があったと記憶しています。これはベースラインは似ていないのですが、「Have You Heard」はCmなので、これも「Cm→Cm」パターンと言えそうです。
<Imaginary Day Tourでの演奏>
<Imaginary Day Tourでの演奏>
このように、1997年から、Pikassoギターでの演奏に続く形で演奏される曲がいくつかあって、それはそれぞれ「So May It Secretly Begin」とベースラインが似ていることが多いようです。続ける際には、同じキーのまま「Cm→Cm」となることが多かったようですが、2008年頃の「d.」のように「Cm→Em」と転調して続くパターンが出てきて、2012年には「e.」のようにPikassoギターのキーも「Dbm」に変わるまでになったようです。
そして今回の2016年のツアーでは、Pikassoギターのキーは「Dm」とUnity Groupの頃からさらに半音あがり、続く次の曲が「Cm」に転調するというパターンも出てきたということになるようです。(「d.」と「e.」の融合パターン?)
今後ももしかすると、このバリエーションでの演奏があるのかもしれませんね。楽しみです。
今後ももしかすると、このバリエーションでの演奏があるのかもしれませんね。楽しみです。
…と、ここまで来てよくよく考えてみると、今回、PikassoギターをわざわざDmにする必要はなかったような気がしますね… なぜDmにしたんでしょうかね…?