PMUG来日公演まであと11日!

11年前の2003年というと、バリトン・ギターによるソロ・アルバム「One Quiet Night」がリリースされた年です。ただ、実際にこのアルバムの内容がレコーディングされたのは、2001年11月頃のようです。

ワン・クワイエット・ナイト
パット・メセニー(g)
ワーナーミュージック・ジャパン
2012-01-18



2001/11/24の夜、バリトン・ギターの3弦と4弦を1オクターヴ高くチューニングするというアイディアを思いついたパットは、自宅で2〜3時間かけて自分のリスニング用にいくつかの曲を録音しました。その曲をCDに焼いて「Speaking of Now」のツアー中に聴いているうち、自分でも演奏が気に入り周囲からもアルバム化を奨められたため、同じ環境でさらに数曲追加で録音を行って、CDとしてリリースしたそうです。

ギターのチューニングは、6弦から「A D G C E A」で、3弦と4弦は1オクターヴ高い状態になっています。
「ミドル・ギターがトップに、ハイ・ギターがミドルに、ロー・ギターがボトムにあるといった感じだね。(中略)普通のギターでは弾けないようなコードを、ものすごくクールなベース音とともに弾くことができる。これはギターの表現の可能性を大きく広げることになる。(ジャズライフ 2003年7月号インタビュー)」
「私は長年ギタリストとしてプレイしてきたけれど、自分ひとりでギターを延々と弾いているアルバムは作ったことがないし、作ることを考えたこともなかった。(中略)このアルバムのいいところは、ひとつの世界観に徹していることだと思っている(ジャズライフ2003年7月号インタビュー)」

「自分ひとりでギターを延々…」というと、1979年の「New Chautauqua」や1994年の「Zero Tolerance for Silence」があるんじゃない? と思ったりもするのですが、「New Chautauqua」はオーバーダブを主眼とした内容、「Zero〜」はひとつのトラックで弾いているものを他のトラックでもまったく同じように弾く「ミラーリング」という効果を狙った内容が中心となっているようです。
「One Quiet Night」は、確かにこれまでには無かったコンセプトのアルバムということなのだと思います。


さてさて、「One Quiet Night」の話を書いていると、2001年の話になってしまいますね…

2003年の活動としては、春にはCharlie Haden(b)との「Missouri Sky Duets」のショートツアーがあり、2003年の夏からは、Christian McBride、Antonio Sanchezとの新しいトリオによるツアーがスタートしました。年末にはこのトリオによる来日公演もありましたね。このトリオによるツアーは2004年も続きました。
<ご参考>
Pat Metheny Solo & Trio
(Pat Metheny, Christian McBride (b), Antonio Sanchez (ds))
2003/12/14(日)〜 2003/12/21(日) ブルーノート東京

そんなツアーの合間、実は2003年4月には、PMGの次のアルバムの制作がスタートしていたのでした。
「完成はずいぶん先のことになるし、明らかにできないことも多いけれど、みんなブッ飛ぶようなものになるよ(ジャズライフ 2003年8月号 インタビュー)」
9月頃にもツアーの無い時期があったようなので、おそらくその頃に次アルバムの仕上げをじっくりと行っていたのだと思われます。このようにして時間をかけて仕上げたアルバム、「みんながブッ飛ぶような」アルバムのリリースは、このインタビューの1年以上も先、2005年の初頭を待つことになるのでした…


【参考音源】
<Last Train Home / Speaking of Now Live in Japan>


<What Do You Want? / Antonio Sanchez - Michael Brecker - Christian McBride - Pat Metheny>
Metheny-Sanchez-McBrideのトリオにMichael Breckerが入っちゃった最強カルテット。2003年7月頃のドイツのジャズフェスと思われます。素晴らしい演奏です!