<寄稿:2011/12 音楽ライター石沢功治(Koji Ishizawa)>

 来る1月にパット・メセニーがラリー・グレナディアを伴って来日しますが、それに先だって、去る10月半ばにニューヨークのブルーノートに出演。ちょうど現地を訪れていた私は一足先に観ることができました。

 驚いたことにメセニーが同店に出演するのはこれが初めて。つまりニューヨーク・ブルーノート・デビューなのです。加えて、ニューヨーク界隈におけるクラブ・ギグは、1984年のヴィレッジ・ヴァンガードでのメセニー・トリオ(チャーリー・ヘイデン&ビリー・ヒギンズ)以来、実に27年ぶりだそう。その後はサイドマンとしては93年にジョシュア・レッドマン・カルテットで同じくヴァンガードに出ていますが、それでも18年ぶりとのことでした。

 その記念すべき公演3日目のファーストはアルバム『メセニー・メルドー』から「報われぬ思い」で始まると、以降は「ジェイムス」や「クエスチョン&アンサー」、「ソウル・カウボーイ」などをグレナディアとのデュオで披露。続いてはパットだけでナイロン弦アコースティック・ギターによる「ファインド・ミー・イン・ユア・ドリーム」、それに42弦ピカソ・ギターを持ち出しての即興演奏もプレイしてました。

 そして、それまで狭いステージ後方で黒い布に覆われていたオーケストリオンの縮小版が露となると、これにはさすがのニューヨークの観客達も息を飲んでいました。パットはそのミニ・オーケストリオンをバックに、再びステージに現れたグレナディアと共に素晴らしい即興演奏を展開。

 それにしても、ところ狭しとセッティングされたミニ・オーケストリオンをたった1曲でしか使用しなかったのは意外でした。なんという贅沢さ!! そこがまたいかにもパットらしいとも言えますが、とにかく、この演出によってヴァリエーションと起伏が生まれていたのはさすがでした。来日ツアーでは、さらに深化したステージが繰り広げられるのではないでしょうか。今から楽しみです。